2026年10月06日

「歯みがきするよ」と声をかけた途端に、口をぎゅっと閉じたり、逃げてしまったり。寝る前の仕上げみがきで、親子ともに疲れてしまう日はありませんか。
むし歯にしたくないから、きちんとみがいてあげたい。その気持ちがあるほど、うまくいかない時間がつらく感じられることもあるでしょう。嫌がるときは、声かけに加えて、触れ方やタイミングも見直す手がかりになります。まずは今日、試せそうな工夫を一つ選んでみてください。
嫌がる場面を少しだけ観察してみる
歯ブラシを見たとき、寝転がるとき、上の前歯に触れたとき。どこで表情が変わるか、ひと呼吸おいて見てみませんか。「歯みがき全部が嫌」だと思っていても、特定の場面で困っていることが分かるかもしれません。
幼いお子さんには、口を触られることに慣れていない場合があります。また、みがく力が強い、上の前歯と唇の間にあるすじにブラシが当たるなど、痛さが理由になることもあります。「わがままだから」と決めつけず、苦手なところを探すつもりで見てあげてください。
言葉で答えられるお子さんには、「どこが気になった?」「ここは痛かった?」と短く聞く方法もあります。答えが出なくても構いません。気づいたことを、次に歯科医院で相談するときのメモにできます。
始める前に何をするか伝える
遊びを終えてすぐに口へブラシが入ると、気持ちの切り替えが追いつかないこともあるでしょう。例えば、「この絵本を読み終えたら、歯をきれいにしよう」と、次にすることを先に伝えてみます。
みがくときも、「まず下の歯をみるね」「ここが終わったら一度お口を休めよう」など、短い言葉で区切りを知らせる方法があります。数を数えるなら、数え終えたところでいったん休憩を。「終わり」と伝えてから何度も続けず、残りがあれば「次はこちらをみがくね」と改めて説明するとよいでしょう。
ここでの数え方は、気持ちの見通しをつけるための工夫です。「何秒なら十分にみがける」という基準ではありません。声かけの例も、必ず嫌がらなくなる決まり文句ではないので、お子さんに伝わる言い方に変えて大丈夫です。
痛みに配慮した触れ方と休憩を大切に
お子さんの頭を保護者の膝にのせて寝かせるなど、頭を安定して支え、お口の中が見える姿勢で行います。仕上げみがき用の歯ブラシは、お口に合う小さめのものを選びます。強く握り込むより、鉛筆を持つように軽く持ち、歯を見ながら毛先を動かしてみてください。上唇の中央にあるすじは「上唇小帯」といい、直接ブラシが当たると痛がることがあります。唇をそっとよけて、すじを避けながらみがきます。
口を開けたままが続くのも負担になります。唾液がたまったり、つらそうな様子があったりするときは、いったんブラシを口の外へ出して休憩を。顔を大きく動かしているときに、ブラシを入れたまま追いかけないようにしてください。
力加減や唇のよけ方は、文章だけでは分かりにくいところです。普段使っている歯ブラシを持って歯科医院で相談すると、実際の道具で確認できます。
手足を大きく動かしてしまうときの支え方
声をかけても手足を動かしてみがくのが難しいときは、頭と腕の動きを支える「寝かせみがき」の方法もあります。
保護者が床に座って両脚を前に伸ばし、脚の間にお子さんを仰向けに寝かせます。頭を保護者側にして太ももの間で支え、お子さんの両腕を左右に開いて、それぞれ保護者の太ももの下に通します。腕を無理に引っ張らず、頭と腕を軽く支えて、お口の中が見える姿勢に整えます。「今から歯をみがくね」と伝え、長く押さえたままにせず、手短にみがきます。
首・胸・お腹を圧迫せず、腕や頭も強く締めつけません。痛がる、むせる、息苦しそう、動きが激しく安全に支えられないときは、ブラシを口から出して中断してください。力を強めて続けず、歯科医院でお子さんに合う支え方を確認しましょう。
できたことを具体的な言葉にする
終わったあとには、「お口を見せてくれたね」「奥の歯までみられたよ、ありがとう」と、できたことを言葉にしてみませんか。最後まで静かにできた日だけが、声をかけられる日ではありません。
例えば、途中で嫌になった日でも「最初は口を開けられたね」と、取り組めた部分は見つけられます。他の子やきょうだいと比べるより、その日の小さな協力に目を向けてみてください。保護者の方も、「今日はここを確認できた」と自分の工夫を認めてよいのです。
親子のやり取りを毎回同じにする必要はありません。短い歌を添える日、落ち着いた声で話す日など、その子の反応を見ながら試す選択肢があります。
うまくいかない日は段取りを変える
歯ブラシに慣れる練習は、お子さんの機嫌がよく、大人にも少し余裕がある時間を選ぶ方法があります。就寝前の仕上げみがきは大切ですが、眠気で毎回つらくなるなら、夕食後から眠るまでの流れの中で、いつなら取り組めそうか考えてみてください。
一度中断した場合も、落ち着いたら残りの部分へ戻るつもりで。いつも同じ場所だけになっていないかを確認し、十分にみがけない日が続くときは、家庭だけで抱え込まず相談してください。慣れる練習と、歯の汚れを落とすケアの両方を、お口の状態に合わせて考えることが大切です。
家族と交代できるなら、「上の前歯のところで嫌がった」「途中で一度休めた」など、気づいたことを共有するのも一案です。毎日の出来ばえを採点する記録でなく、困ったところを相談しやすくするためのメモで十分です。
自分でみがくときも安全な場所で
「自分でやりたい」という気持ちは大切にしながら、歯ブラシを持ったまま歩き回らせないことが必要です。床など安定した場所に座り、大人がそばで見守ります。本人が使うものは喉突き防止の工夫がある歯ブラシを選び、保護者が扱う仕上げみがき用と使い分けます。
仕上げみがき中も、きょうだいが急にぶつかるなどの事故に注意してください。もし口の中や喉にブラシを突いたら、傷が小さく見えても速やかに医療機関へ。刺さったままの場合は無理に抜かず、119番へ連絡してください。
歯科医院で相談するときに伝えたいこと
痛がる場所がある、歯ぐきが腫れている、出血が続く場合は、声かけだけで様子を見続けず歯科医院に相談してください。嫌がる様子だけで、むし歯などの病気があるかどうかを判断することはできません。
受診時には、「いつから」「どこに触れると嫌がるか」「普段どのようにみがいているか」を伝えると、困っている場面を共有できます。「痛そうではないけれど、毎日のケアがどうしても難しい」という相談でも構いません。
福岡南区あつみ歯科医院は、毎日のお手入れと、その先のお口の健康を大切に考えています。親子に合う続け方を、一緒に探していきましょう。