2026年9月07日

「歯ぐきの手術を考えましょう」と言われたら、驚いてしまいますよね。
「歯石を取ってもらったのに、まだ治療が必要なの?」「痛そうで心配」「仕事や食事に影響するのかな」。診察室では聞けなかった疑問が、帰宅してから浮かぶこともあるでしょう。
まずは、手術の名前を覚えるより、ご自身のお口で何が起きていて、何のために提案されたのかを確かめるところから始めましょう。歯周病の治療で、すべての方に手術が必要になるわけではありません。
歯石取りの後に、もう一度検査をするのはなぜ?
歯周病の治療では、お口の検査をしたうえで、歯みがき方法の確認や歯石の除去などの基本的な治療を進めます。その後、歯ぐきの反応を見ながら、出血や歯周ポケットなどを再び調べます。これを「再評価」と呼びます。
歯周ポケットとは、歯と歯ぐきの間の溝が深くなった部分のことです。治療でどの程度改善したか、炎症が残っていないかを確かめて、次の対応を考えます。
「まだ通うのは、今までの治療が無駄だったから?」と思わなくても大丈夫です。基本的な治療への反応を確かめることは、必要な治療を選ぶための大切な段階です。気になる部分が残っていても、すぐに手術と決まるわけではありません。
例えば「歯周ポケットが8mm」と言われたら

ここからは、治療の考え方を知るための仮の例です。実際の患者さんの症例や、治療結果を示すものではありません。
8mmという数字は、歯ぐきの縁から検査用の器具が入る深さを表します。「骨が8mmなくなっている」という意味ではなく、この数字だけで手術や抜歯が決まるわけでもありません。出血、膿、レントゲンで見た骨の状態、歯の揺れなどを合わせて判断します。
例えば、最初の検査で奥歯の一か所が8mmだったとしましょう。まず歯みがきの工夫や歯石の除去などを行い、治り方を再検査します。深さが4mmになり、検査時の出血もなく、ほかの状態も落ち着いていれば、その場所の手術をせずに継続管理へ進める場合があります。これは改善を保証する数字ではなく、判断の流れの一例です。
一方、基本的な治療を行っても8mmの深さと出血が残り、歯の根の形などのため十分に清掃しにくい場合は、歯周外科を検討する場面です。ご家庭のお手入れだけでは管理しにくい部分に、どう対応するかを相談します。全身の健康状態や喫煙、お手入れの状況、ご本人の希望も踏まえて選びましょう。
手術の「目的」と、その先の「目標」
このような奥歯では、歯ぐきを開き、見えにくい根の周囲を直接確認して歯石などを取り除く方法が候補になります。これが処置の目的です。骨の欠損の形などが適していれば、歯を支える組織の回復を目指す再生療法を検討する場合もあります。すべての8mmのポケットに再生療法が適するわけではありません。
その先の目標は、炎症を落ち着かせ、清掃・管理しやすい状態に整え、歯を長く使える可能性を高めることです。治療した場所では「ポケットが4mm以下で、検査時の出血がない状態」が目標の一つになります。ただし、必ず8mmから4mmになる、骨が元通りになると約束できるものではありません。数字だけでなく、出血や膿、噛むときの状態、長期的な安定も確認します。
手術を受けないと、どうなるのでしょう?
「受けなければ必ず歯が抜ける」という意味ではありません。ただ、深いポケットと炎症が残る場所では、細菌の汚れを管理しにくく、腫れや膿を繰り返したり、歯を支える組織の破壊が進んだりする心配があります。進行すれば歯を残すことが難しくなる場合もありますが、その見通しは歯ごと・人ごとに異なります。
8mmの部分に痛みがなくても、それだけで安定しているとは判断できません。反対に、深さだけから「すぐに悪くなる」とも言い切れません。以前の検査と比べて変化しているかを確かめることが大切です。
今すぐ手術を選ばない場合も、そのままにするのではなく、再度の非外科的な清掃や、お口に合った間隔での検査・専門的ケアを相談できます。ただし、同じ効果が得られるとは限らず、深い部分の管理には限界もあります。出血や腫れが続く、ポケットが深くなる、骨の変化が進むときには、改めて治療方針を考えましょう。
「手術が怖い」「通院の予定が立たない」というお気持ちも大切な相談材料です。手術の負担と、炎症を残したまま管理する場合の見通しを並べて、ご自身に合う進め方を一緒に選びましょう。
痛みや、治療後の生活が心配なときは
一般に手術中は局所麻酔を使いますが、治療後には痛み、腫れ、出血などが生じることがあります。歯ぐきの位置が変わり、歯が長く見えたり、冷たいものがしみたりする場合もあります。程度や経過には個人差があるため、「痛くない」「すぐ普段どおり」とは一律に言えません。
仕事の予定、食事、運動、歯みがきなど、日常生活について気になることを事前に伝えておくと、準備がしやすくなります。処置の範囲に合った注意点を確認しましょう。
持病や服用中のお薬、薬のアレルギーについてもお知らせください。お薬は自己判断で中止せず、必要に応じて主治医と相談して進めます。治療後の痛み止めやお手入れも、担当医の指示に沿って行いましょう。
決める前に、聞いておきたいこと
不安なときは、聞きたいことをメモして持参する方法もあります。例えば、次のような質問です。
・どの場所に、どのような問題が残っていますか?
・今回の手術の目的と、期待できる改善は何ですか?
・手術以外の対応はありますか? それぞれの利点と注意点は何ですか?
・治療を延期する場合、どのような見通しや注意点がありますか?
・通院回数、費用、治療後の生活への影響はどのくらいですか?
・治療後に困ったときは、どこへ連絡すればよいですか?
一度にすべて理解しようとしなくても大丈夫です。「もう一度説明してほしい」「家族と相談したい」という気持ちもお伝えください。説明を聞いたうえで別の歯科医師の意見を求めることも、選択肢の一つです。
手術が終わった後も、お口を一緒に見守りましょう
手術は治療の一段階です。その後も治り方を確認し、状態に合ったお手入れと継続的な管理を行います。
歯周病の治療では、歯科医院での処置とご家庭でのケアを組み合わせることが大切です。ただ、「自分の磨き方が悪かった」と責める必要はありません。奥歯に届きにくい、歯間ブラシのサイズが分からないなど、難しいところを一緒に整理しましょう。道具や持ち方を変えるだけで、続けやすくなることもあります。
福岡南区あつみ歯科医院では、これからも気持ちよく食事を楽しめるよう、歯だけでなく歯ぐきや日々のお手入れも大切に考えています。「手術と聞いて不安になった」「説明を聞いても、まだ迷っている」というお気持ちも、そのままお聞かせください。ご自身のお口の状態を知り、納得して次の一歩を選べるよう、一緒に考えていきましょう。
参考資料
日本歯周病学会 歯周病Q&A https://www.perio.jp/qa/treatment/
日本歯周病学会監修 歯周外科治療 https://periobook.perio.jp/treatment-knowledge/91/
日本歯周病学会監修 歯周組織再生療法 https://periobook.perio.jp/treatment-knowledge/96/
日本歯周病学会 歯周治療のガイドライン2022 https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022.pdf
2026年10月5日確認